人生のみちを行くあなたは、つまづいたり転んだりすることがあるかもしれません。
ひどく転倒して動けないでいる間に、同期や仲間に差を付けられたと感じたり、
後輩にまで追い抜かれたと感じることもあるでしょう。
例えば会社の命令で
石と泥のでこぼこと、ぬかるんだ未舗装の道を苦労して行ったり、
立ち止まったりしながら行かざるを得なくなる……とか。
例えば以前から考えていた人生計画では
そろそろ結婚しているはずなのに、仕事ばかりでそれどころではない。
まわりはみんな幸せそうにしているのに……とか。
あなたは、この状態をどうとらえますか?
そして、どう乗り切りますか?
転機または移行期
「自分の周囲で変化が起こっているちょうどその時に、なぜ自分の人生が行き詰まっているのか?」
これは、ブリッジスという理論家の先生の著書『トランジション』の一節です。
冒頭でお伝えした「仲間には差を付けられ後輩にまで追い抜かれたように感じ……」によく似ていますね。
ブリッジスはアメリカ生まれの著作家・組織コンサルタントで、「転機」の権威として知られています。
みなさんも、転機という言葉はご存じだと思います。
国語辞書によれば
「生活や境遇などをきりかえるきっかけ。かわりめ」(「新選国語辞典(小学館)」)とあります。
きっかけ、かわりめというと
瞬間的な出来事といったとらえかたが近いかもしれません。
さて先ほどのブリッジスの著書『トランジション』ですが、
この場合のトランジションという語は日本語では「転機」と訳されることが多いようです。
人生は転機の連続です。
転機を迎え辛くなっている人や転機の中で必死にもがく人を支援するプロフェッショナルが、
産業カウンセラーやキャリアカウンセラー、キャリアコンサルタントと呼ばれる人たちです。
彼らはキャリア形成の支援において、トランジションを次のようにとらえます。
トランジション=移行期または転機
「移行期」というからにはそれなりの長さの期間がありそうだぞ、とお感じになるでしょう。
転機または移行期とは。またどう過ごすか。
ダニエル・レヴィンソンという理論家がいらっしゃいます。
レヴィンソンは「発達」について研究した心理学者で、
人の発達を「四季」に例え、4つの発達段階を経て進んでいく、としました。
各発達段階の間には「移行期」が存在し、
移行期はこれまでの過ごしかたに見直しを加える時期である、としています。
そして移行期には通常4、5年が費やされるとしました。
また彼は各発達段階には解決すべき課題(危機)が存在すると述べています。
先ほど登場した『トランジション』の著者ブリッジスも、
トランジション3段階理論の中で「ニュートラルゾーン(中立圏)」では、
自分自身と向き合い、徹底的に考え悩むことが大切な時期だとしています。
(ブリッジスのトランジション3段階理論については、
過去のブログ「何かがうまくいかない…それは〇〇の始まりかもしれない」をごらんくださいね)
移行期、転機は瞬間的なことではなく、
時間をかけ「自分自身と向き合い、これまでの過ごしかたを振り返る、見直しを加える必要がある」と
研究者たちは提唱しているのです。
転機(または移行期)の3タイプ。あなたが迎えている転機はどのタイプ?
「思いがけない出来事で仲間には差を付けられ、後輩にまで追い抜かれたように感じ、
人生がうまくいっている人が恨めしく感じる」というとき、この状態をどうとらえますか?とお尋ねしました。
思いがけない出来事で、とシチュエーションを限定しませんでしたが、
転機には3つのタイプがあります。
まず、思いがけない異動、思いがけない事故、思いがけない病気、思いがけない災害、思いがけない人の死など
「予期していなかったことが起こる」というタイプです。
反対に「予期していたことが起こる」ことも転機、移行期です。
例えば、卒業する、就職する、結婚する、子どもが生まれる、引っ越す、昇進する、退職するなどといったことです。
さらに「予期していたことが起こらない」こともまた転機、移行期です。
例えば、卒業できない、就職が決まらない、結婚できない、昇進できないなどです。
(このように転機を3つのタイプに分けたのはこれもやはり転機で有名な学者であるナンシー・シュロスバーグ氏ですが、今回は説明を割愛いたします。)
なお、予期していること、予期していないことの内容については、個人個人で異なります。
例えば、結婚を考えていないという人もいらっしゃるでしょうし、考えているという人もいらっしゃるでしょう。
子どもを持つことを考えていない人もいらっしゃいますし、考えている人もいらっしゃいます。
昇進を望んでいる人も、望んでいない人もいるでしょうし、さまざまな価値観があると思います。
さて、あなたが今迎えている辛い状況は、これら3つのタイプのうちのどれでしょうか。
今迎えている状況をこうして識別することで、
これがあなたにとって転機なのかどうかを判別する一助になると思います。
そしてどのタイプであっても、もし転機、移行期であるとしたら、どうする必要があるのでしょうか。
もうお分かりですよね。
「転機、移行期ととらえ、時間をかけて自分自身と向き合い、
これまでの過ごしかたを振り返る、見直しを加える必要がある」のです。
もし転機を見逃したり、見て見ぬふりをした場合や
ポジティブ思考で乗り切ろうとした場合は……
これを見逃したり、見て見ぬふりをすることも一時的には可能でしょう。
そして当然、状況は変わりませんよね。
また日常を乗り切るスキルとしてのポジティブ思考や前向き思考でしのぐことも、短期的には可能だと思います。
そしてそれはスキルを使った状況の乗り切りであるがために、
物事の解決を先送りしたに過ぎず、あなたの態度や思考には変容が起こらないままである可能性があります。
つまりそのような乗り切りは、中長期的視点から見れば個人の成長や発達にはつながらない可能性があると言えます。
レヴィンソンは各発達段階には解決すべき課題があるとした、とすでにお伝えしましたね。
例えば40~45歳の「人生中間の移行期」は「中年の危機」であり重要な転換期であるとし、
この「人生中間の移行期」での課題(危機)としては、
「若さと老い」「創造と破壊」「愛着と分離」
などといった課題を解決することで「積極的・創造的になれる」が、
それができないと「停滞・衰退していく」と述べたそうです。
変化の激しい21世紀のこの時代において、停滞することは現状維持につながりません。
停滞=衰退です。
転機を見逃したり、見て見ぬふりをしたりしてきちんと取り組まない場合には、衰退の道が待っています。
反対に、転機をとらえ、自分自身と向き合い、これまでの過ごしかたを振り返る。
見直しを加える。
こうして、本当の意味で転機を乗り切れば、成長が待っています。
まず、恐れずに転機を転機だととらえてください。
転機は正にチャンス。
これは単なるポジティブ思考的な考えかたではありません。
研究を重ねた理論家の先生がたがおっしゃるのですから、
非常に説得力のある事実です。
ここまでお読みになったかたなら、ご納得いただけるでしょう。
転機、移行期は個人の成長と発達のチャンス
つまり私たちは転機、移行期においては、
転機、移行期に気づき、
課題(危機)を解決し、
積極的・創造的になるといったような「個人の成長と発達を遂げていく」ことができるチャンスを迎えているのです。
そしてその際は中長期的視点に立って、しっかりと取り組むことが必要です。
そしてチャンスは危機である(ピンチはチャンス。チャンスはピンチ)
そして転機は、移行期はチャンスであると同時にピンチです。危機です。
冒頭の話に戻ってみましょう。
「思いがけない出来事で、仲間には差をつけられ後輩にまで追い抜かれたように感じ、
人生がうまくいっている人が恨めしく感じる……。」
これはどう考えても、辛いしピンチ。やはり危機なのです。
「ピンチはチャンス」とは本当によく言ったものですが、
そしてやはり「チャンスはピンチ」なのです。
転機または移行期は非常に辛いかもしれません。
自分自身に向き合うときは、次のことをぜひ念頭に置いてください。
(それぞれ過去のブログにリンクしています。参考になさってくださいね)
・人生は勝ち負けではない……ではあなたにとって人生とは何か
・悩むこと、後悔することって、時間の無駄?いいえ、それは「あなた」にしかできないこと。
ひとりでは、転機に向き合えない、辛い、不安、中長期視点に立つなんてできない、というときは
あなたの辛さを受け止め、キャリア形成、キャリア構築の支援ができるカウンセラーとともに
これまで歩んできたみちを振り返り、これからのみちをご一緒に考えてまいりましょう。
(キャリアって何?というかたは、過去のブログ「キャリアとは何か?あなたのキャリアの所有者は誰なのか?」
を参考になさってくださいね。)
あなたとみち応援室は、あなたのキャリア形成、キャリア構築を支援します。
これまでのこと、これからのことをご一緒に考えていきましょう。
この記事があなたのお役にたてましたなら幸いです。