「キャリア」と聞いて、みなさんはどのようなことを思い浮かべますか?
・仕事をバリバリこなすこと?
・中央官庁で難しい仕事をしている人たちのこと?
・華々しい仕事の経歴のこと?
キャリア教育が教育現場に浸透する前に学校を卒業した世代ですと、
このような印象を抱いているかたもいらっしゃるかもしれません。
いずれも「仕事」のことであり、
しかも「すごく特別な仕事、大変な仕事、華々しい仕事」というようなイメージです。
今回お話しする「キャリア」はそれらとは異なります。
キャリアとは、もっと豊かで誰にとっても身近なことです。
キャリアとは
キャリア形成の支援、キャリア構築の支援というときの「キャリア」とは、次のようなことを指します。
〇仕事も含んだその人らしい生き方の積み重ね、連鎖
〇一言で言えば「人生」
「人生」と言うとだいぶ大括りなのですが、人生そのものとしても過言ではありません。
キャリアはもともと「馬車の轍」を示す語だそうです。
そこから次第に、人がたどる行路や足跡、経歴なども意味するようになったと言われています。
「仕事“も”含んだ」ということで、余暇や家庭生活や地域での活動を含む、広い概念です。
キャリアについては、それを専門に研究する学者さんが大勢いらっしゃいます。
キャリア理論で有名な学者さんは次のように定義づけています。
〇「生涯においてある個人が果たす一連の役割、および役割の組み合わせ」(ドナルド・E・スーパー)
〇「単なる職業、職務、進路ではなく、
相互に作用し合い影響し合う人生の様々な役割を包括する概念」(サニー・S・ハンセン)
では、日本という国においてはどのような定義がされているでしょうか。
日本ではキャリアという語はかつて「進路」とか「経歴」と訳されることが多く、
1987年に日本進路指導学会が提案した「進路指導の定義」によれば
〇「一人の人が生涯にわたって踏み行き形成する職業経歴の全体をいう」
といった表現をされてきました。
このように表現はさまざまですが、
キャリアという語は、少なくとも「職業」とか「仕事」とイコールではなく、
広がりのあるものであり、決まりきったものではなく、
人生とか生涯といった時間的な流れを考慮しているものであるということが見えてきます。
現代のキャリア形成
「職業能力開発促進法」という法律をご存じでしょうか。
「……職業に必要な労働者の能力を開発し、及び向上させることを促進し、
もつて、職業の安定と労働者の地位の向上を図るとともに、
経済及び社会の発展に寄与すること」(第一条)を目的とする法律で、1985年に誕生しました。
そして2016年に行われた改正では、次のように、
労働者自らもキャリア開発に努めることが努力義務として求められました。
「労働者は、職業生活設計を行い、
その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるものとする。」(第3条の3)
会社勤めをしているかたですと、
ご自身のキャリアは会社の行う研修や、
会社に命じられた異動を経験するなどして形成していくことが多かったと思いますが、
これからは自ら職業生活設計を行い、自発的に能力開発を行うことが求められているのです。
自発的なキャリア形成って、そんなこと急に言われても……
自発的に、と急に言われても困る……。
そういうかたもいらっしゃると思います。
また、
自発的にと言われても、ピンとこない。
だってこのまま勤め続けるつもりだし、会社からリストラされることもなさそうだし。
命じられた仕事は文句をつけずにできるし、異動には従うし。
社内教育も充実していて、やりたいことができているし、困っていることはないなあ。
このまま同級生や先輩と同じように、高校や大学などに進学すればいいわけだし、大丈夫。
今がとっても充実している。そういうかたには興味を持ちづらいかもしれません。
前段でお伝えしたとおり、「キャリア」は人生そのもの。
「あなたらしい生き方の積み重ね、連鎖」です。
今が順調で充実している、困っていないということも、
それもあなたが生きているあなたの人生、キャリアです。
そういうときは、わざわざ「キャリア」といって考え込まなくてもいいのかもしれません。
いったん忘れていただいて構わないと思います。
そして、興味を持ったときにはぜひ「キャリア」のことを思い出して考えてみてください。
反対に、今まさに次の状態にあるかたにこそ、続きをお読みいただきたいと思います。
・進路に悩んでいるかた
・職場や職業に違和感を持っているかた
・今いる場所に違和感しかない、というかた
・このままでいいのだろうか……と悩んでいるかた
・転機を迎えているかた
・自分が何者かわからなくて苦しいかた
このように、転機を迎えているかたは今こそ「キャリア」を考える大チャンスの到来中です。
(「転機」については過去のブログ「何かがうまくいかない…それは〇〇の始まりかもしれない」も参考になさってくださいね)
ぜひ、この機に考え、
それをもとに一歩踏み出すか、踏みとどまるのか、などといった
「意思決定」をすることをお勧めします。
「でも、自分は何がやりたくて、どいういうことに向いているのかなんて、わからない。
それに時代の移り変わりが激しいから、
これまであった職業でも数年後には消滅していることだって考えられる。
そんな時代にキャリアを考えるって言ったって、何をどうすればいいのだろう。
それだけじゃない。時代の動きのほかにも、自分自身だって変化する。
年齢を重ね、子育てや突然の病気、親の介護なんかで、
今までと同じように働けなくなるという個人的変化だって訪れる。
いったい、もうどうしたらいいのだろう……」
こんなふうに困惑したり、不安に思ったり、途方に暮れたりするかもしれません。
荒野に放り出されたような心細さを感じるかもしれません。
こういうときは、これまで自分が拠り所として従ってきた組織や、
慣れ親しんだ考えかたに立ち戻りがちです。
心は揺れながらも、行動や考えかたを変えることができないでいる、
意思決定ができないでいるというパターンを繰り返しているかたも多いかもしれません(過去の私がそうでした)。
(なお、変えないでいるということもまた一つの意思決定ではありますことを、念のため申し添えます。)
そのほうが心理的には安心感を覚えますから、ごく自然な心の動き、働きかもしれません。
そして、こんなとき、次のように問われたらどうでしょうか。
あなたのキャリアの所有者は誰?
あなたのキャリアの所有者は、あなた自身です。
会社でも、上司でも、学校でも、友達でも、親でも、先生でもありません。
あなた自身です。
これについて、現在のキャリアカウンセリングの第一人者といわれるマーク・サビカス氏は次のように説明しています。
「変化の激しい21世紀に生きる我々は、自分の将来に「関心」を持ち、自分でキャリアを「統制」しなければいけない。「好奇心」を抱いて自分のキャリアを探し、自ら主体的に問題解決して「自信」を付けていくことが大切である」
キャリアを「統制」するとは、
「自分のキャリアを構築する責任は自分にある」という意味です。
正に、キャリアの所有者は自分である、ということをおっしゃっています。
研究を重ねてきた第一人者がおっしゃるのですから、非常に重い言葉だと思います。
あなたのキャリアはあなたのもの。あなたが見出し、作っていくものなのです。
あなたが気づき、見出す、「あなたとみち」
あなたのこれまでには必ず意味があり、それはこれからの道しるべになります。
ゴールや正解や運命は、初めから誰かによって決められているものではありません。
また誰かが「あなたのやるべきことはこうですよ」と教えてくれるものでもなく、
自己実現するときの自己というものが、まるで雷に打たれるようにある日突然に降りてくるものでもありません。
(ごく稀に、そういうかたもいらっしゃるのでしょうけれども……)
それは気づき、見出し、創り上げて、さらに創り続けていくものです。
あなたは、晴れた日の夜空を見上げたことがあると思います。
たくさんの星が見えますね。
昔の人々は、星々を線でつないで意味ある星座に見立てました。
一つ一つはバラバラの星たちですが、線でつなぐと意味ある形に見えてくるから不思議ですね。
わたしたちの経験も、まるで夜空に広がる無数の星のようです。
一つ一つはバラバラで、一見すると何のつながりも意味もないように思えます。
そして、もしつなぐことができたら、意味のある形が見えてきます。
ひとりでは、意味や意義が見出せない、わからないというときは
キャリア形成、キャリア構築の支援ができるカウンセラーとともに
これまで歩んできたみちを振り返り、これからのみちをご一緒に考えてまいりましょう。
あなたとみち応援室は、あなたのキャリア形成、キャリア構築を支援します。
これまでのこと、これからのことをご一緒に考えていきましょう。
この記事があなたのお役にたてましたなら幸いです。