何かがうまくいかない。
これまで何も思わずにやってきたけれど、どういうわけかうまくいかない。
何か(例:仕事、学校、家庭)がこれまでのようにうまくいかなくなった
空虚感にさいなまれる
混乱する
これまでと同じはずなのにうまくいかなくなってきた
自分の方向性が見えない……
こんなとき、あなたは「転機」に突入しかけているのかもしれません。
誰にでも訪れる可能性がある転機。
今まさに、辛い、混乱している、というかたや
これって転機なのかな……と感じるかたは続きをごらんくださいね。
転機がどのようなものかについて知ることが、必ずお役に立つはずです。
転機の始まりは、何かが終わるとき
転機について、ウィリアム・ブリッジスという理論家は次のように述べています。
「転機の始まりは、何かが終わるとき」
そして転機は3段階で構成されている、といいます。
第1段階 何かが終わるとき(終焉)
第2段階 ニュートラルゾーン(中立圏)
第3段階 何かが始まるとき(開始)
ウィリアム・ブリッジスはアメリカ生まれの著作家・組織コンサルタントで、「転機」の権威として知られています。
彼の提唱した転機(トランジション)の理論の特徴は、「転機の始まりは、何かが終わるとき」という点にあります。
何かが始まるとき、ではありません。何かが終わるときこそが、転機の始まりだと捉えています。
そのうえで、
転機は「年齢にかかわらず起こる」と考え、
転機の過程を次の3段階に分けて考える「トランジション3段階理論」を提唱しました。
年齢にかかわらず、誰にでも起こる可能性がある転機。
それぞれの段階について簡単に見ていきましょう。
第1段階 何かが終わるとき(終焉)
何かが終わるとき、人は喪失感や混乱を覚え、自分が何者かわからなくなったりします。
自分がどの方向へ向かっているのかといった感覚が失われたように感じ、
これまでの自分が失われているように感じるかもしれません。
このためこの時期は大変な苦しみを伴うかもしれません。
ここで大切なことは、何かを確実に終わらせること。
つまりこれまでの◆◆は終わったのだ、ということをきちんと受け止めること。
それがトランジションの始まり、第1段階なのです。
第2段階 ニュートラルゾーン(中立圏)
中立なんていうと、苦しみもないのかと思われがちですが、違います。
この時期は徹底的に自分自身と向き合い、考え、悩むことが求められます。
これってけっこう、苦しいことだとお感じになりませんか?
なおブリッジスによれば、
このニュートラルゾーンをしっかりと体験することが第3段階の準備であり、第3段階の開始につながるそうです。
具体的にはどのようにすることでニュートラルゾーンをしっかりと体験できるのでしょうか。
これについてブリッジスは6つのアクションを提唱しています。
ブリッジスの6つのアクション(ニュートラルゾーンをしっかり体験するための行動)
① 1人になれる「特定の時間と場所」の確保
これによって、自身の内なる声を聴こうというもの。
② ニュートラルゾーンの体験記録を書き留める
頭によぎる思いや考えをメモしておく。
③ 「本当にやりたいことは何か」の発見
自分は何がしたいのかを率直に問いかける。
④ 自叙伝執筆のための一休み
過去の振り返りにニュートラルゾーンを抜け出すヒントがある。
⑤ 「もし今死んだら心残りは何か」の想起
自分の死亡記事を書いてみる。この人物がやり残したことは何かを第三者の視点から書いてみることで、
自分が何をやりたかったのか、を客観的に見つめることができる。
⑥ 自分なりの「通過儀礼」を数日間体験する
家庭や仕事を数日間離れ、一人旅をする。
自分とじっくり対話できる落ち着いた環境を用意する。
そこでの質素な生活を心がける。
考えたこと、感じたことを書き留めておく。
心の動くままに行動し感情は抑え込まず喜怒哀楽を味わう。
第3段階 何かが始まるとき(開始)
ブリッジスによれば、この開始の時期は、計画的・偶発的に関わらず新たに訪れるそうです。
安定した安全である現状が壊れてしまうのではないか、という不安が生じるために
内的な抵抗が起こりやすい時期ではあるものの、
内的な抵抗が起こるということをあらかじめ分かっておき、
焦らない気持ちを持つことがこの段階を乗り切る秘訣だといいます。
以上がトランジションの3段階です。
トランジションの3段階理論をどう利用するか
ブリッジスの理論の特徴は、「転機の始まりは、何かが終わるとき」と終わりから始まるととらえている点です。
私たちが普段「転機」というと、
何か明るい出来事の始まりのようにとらえることが多いように感じます。
しかし、何かが始まるということは、
何かが終わるから始まるのだというとらえ方のほうが、
物事の真実に近いように感じませんか?
「あの転機があったから、今の(安定した、成功した、明るい)自分がいる」
こういう言葉をよく見聞きしませんか?
このとき言う「あの転機」とは、
当人にとってはもしかしたら「物事の終焉」であり、
喪失感や混乱、空虚感を抱いて過ごしていたかもしれないというのは、想像に難くないでしょう。
私自身、過去に転機を経験しています。
そして徹底的に悩みました。
悩むことは決していけないことではありません。
(過去のブログ「悩むこと、後悔することって、時間の無駄?いいえ、それは「あなた」にしかできないこと」も参考になさってくださいね。)
私の転機については「カウンセラー紹介」で詳しくお話ししていますが、
当時ブリッジスの理論を知っていたら、6つのアクションを手早く片っ端から試していたと思います。
しかし、ブリッジスの理論を知らないまでも、
当時の私は6つのアクションのうち、
①②③④⑤⑥すべてを手探りで実行していました。
(④について「自叙伝」は書いていません。振り返りをじっくり行いました。)
知っていたら、もっと早かったかもしれませんし、
転機って3段階で終わるんだーともっと気楽に過ごせたかもしれません。
知っているということは、大事です。
誰にでも転機は訪れる可能性があります。
あらかじめ知っておくことで、いざというとき利用できるのです。
理論はお勉強のためにあるのではなく、困ったときに利用するためにあるのですね……。
ここで個人的な感想を二つお伝えします。
まず、一つめに
6つのアクションのうち⑤については、
お疲れのかたには率先してお勧めはできないなあ、ということです。
ただし、ブリッジス大先生に歯向かうつもりは毛頭ありません……。
とは言え、心と体がお疲れの方には、死の想像はあまりにも負担が大きいと思います。
無理をせず、元気があるときに行うことをお勧めいたします。
ご注意くださいね。
(ブリッジス大先生だってきっと「疲れているときに無理をしちゃいかんぞ」と優しくおっしゃるに違いありません!)
二つめに、6つのアクションのうち①はまさに
「カウンセリングやコーチング、キャリアコンサルティングがお役に立つ」ということ。
自分と向き合うというのはとても困難なことです。
そしてカウンセリング、コーチング、キャリアコンサルティングは
あなたが自分自身と向き合うことを支援する安全で最適な方法の一つだと思います。
さて、今回は「ブリッジス」という理論家さんのトランジションの3段階について触れました。
実は転機についてはたくさんの研究がなされており、
ブリッジスのほかにも理論家さんがいらっしゃいます。
今後も機会を見つけてご紹介していきますね。
もし、転機に直面して一人では自分と向き合うのが辛い、
これは転機なのだろうか、と悶々としているというときは、
一人で抱え込まず、その思いを信頼のおけるご友人やご家族に聞いてもらうのはとてもいい手段です。
もし、聞いてくれる人、話せる人が見当たらないときは、カウンセラーを頼ってください。
あなたがはなせるよう、じっくりとお聴きいたします。
ご一緒に考えていきましょう。
この記事があなたのお役にたてましたなら幸いです。