キャリア形成の支援って、自分に関係ある?意味あるの?(2)

「あなたにキャリア形成の支援は関係あるでしょうか」

前回のブログはこの問いかけからスタートしました。

そして
現代では労働者自ら主体的にキャリア形成を行うことが求められており(職業能力開発促進法第3条の3)、
働く人(また将来働くことになる人)にとって無関係ではなく
関係大アリなのだということ、


さらに
自分が望むキャリアを自分で作っていくためには
プロによる支援を受けることも視野に入れたほうがよい、というお話をいたしました。


続いて
じゃあ、キャリア形成の支援って意味があるの?ということについて
「令和4年版労働経済の分析」(厚生労働省)から引用して
「キャリアコンサルティングが労働者のキャリア形成意識やキャリア形成に及ぼす影響」には
どんなものがあるかをお伝えしたところでした。


今回は、これら影響について労働経済の分析には具体的にどのようなことが書かれているかについてお伝えします。

まず、キャリアコンサルティングが労働者のキャリア形成意識やキャリア形成に及ぼす影響についておさらいしましょう。

キャリアコンサルティングが労働者の
キャリア形成意識やキャリア形成に及ぼす影響

①『キャリアコンサルティングを受けた者の方が、自ら職業生活設計を考えていきたいと考える者の割合が高い傾向がある』

②『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、現在の仕事内容や職業生活全般の満足感が高い傾向にある』

③『過去にキャリアコンサルティング経験のある者の方が転職回数は多い傾向にある』

④『キャリアコンサルティング経験がある者の方が、特定の分野の仕事に限定した職業経験を積むよりも、異分野へのキャリアチェンジを積極的に行う傾向がある』

⑤『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者の割合が高い。また、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者には、キャリアコンサルティングを企業外で受けている者の割合が比較的高い傾向にある』

⑥『キャリアコンサルティングの経験がある者は自発的な能力向上の取組を行うことが必要と考える者の割合が高い。相談場所・機関別にみると、企業内よりも企業外や学校等でキャリアコ ンサルティングを受けた場合の方が自発的な能力向上の意識が高い者が多い傾向がみられる』

⑦『キャリアコンサルティングにより、現在の仕事に対する影響に加え、「自分の目指すべき キャリアが明確になった」「自己啓発を行うきっかけになった」といった、キャリアに関する意識や行動への良い影響を感じている』

⑧『企業内でキャリアコンサルティングを受ける場合は、キャリアの見通しの向上のほか、職業能力の向上、労働条件や人間関係の改善といった変化を感じている者が多い。企業外や公的機関でキャリアコンサルティングを受ける場合は、キャリアの見通しの向上のほか、就職や転職に結びつく者の割合が高い』

⑨『キャリアに関する相談先は、相談先が企業外部の場合、正社員については「自分の目指すキャリアが明確になった」「自己啓発を行うきっかけになった」とする割合が、正社員以外 については「自己啓発を行うきっかけになった」とする割合が高い』

(令和4年版労働経済の分析(厚生労働省)p221~p228から引用。ただし丸数字は本ブログ作者が便宜的に附番しました。)

ここまでが前回のおさらいです。

それでは、具体的にどのような分析がなされているか、①から見ていきましょう。

目次

①『キャリアコンサルティングを受けた者の方が、自ら職業生活設計を考えていきたいと考える者の割合が高い傾向がある』
②『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、現在の仕事内容や職業生活全般の満足感が高い傾向にある』

まず、
①『キャリアコンサルティングを受けた者の方が、自ら職業生活設計を考えていきたいと考える者の割合が高い傾向がある』
②『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、現在の仕事内容や職業生活全般の満足感が高い傾向にある』

についてです。

労働経済の分析では、①②と結論付けるに当たり、詳細は割愛しますが
能力開発基本調査等の資料を用いて説明しています。

そして①を踏まえて②を考えると

『キャリアコンサルティングを受けている労働者は、
自らの適性や能力、関心などに気づき、自己理解を深めた上で、
自身に合った仕事を主体的に選択することで、
仕事内容や職業生活への満足度を高めている可能性があると考えられる』

と分析しています。

「へえー、やっぱりそうなのか」
「え?キャリアコンサルティングって、職業生活への満足度を高めるなんていう影響があるの?意外だな~」

といったさまざまな感想が出てきそうですね。

③『過去にキャリアコンサルティング経験のある者の方が転職回数は多い傾向にある』
④『キャリアコンサルティング経験がある者の方が、特定の分野の仕事に限定した職業経験を積むよりも、異分野へのキャリアチェンジを積極的に行う傾向がある』

これについて労働経済の分析では
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果をもとに次のように分析しています。

『過去にキャリアコンサルティングを受けた経験がある者の方が、
転職回数が「0回」である者の割合は低く、「1回」以上である者の割合は高くなっている。
したがって、キャリアコンサルティング経験がある者の方が、転職回数が多い傾向があることが分かる。

さらに
キャリアコンサルティングを受けることと異分野へのキャリアチェンジの関係については、

『キャリアコンサルティングを受けた経験がある者は、
キャリアコンサルティングを受けた経験がない者と比較して、
「特定の分野・業種・業界で一つの仕事を長く経験してきている」者の割合がやや低い一方、
「特定の分野・業種・業界でいろいろな仕事をたくさん経験してきている」
「いろいろな分野・業種・業界でいろいろな仕事をたくさん経験してきている」
「いろいろな分野・業種・業界で1つの仕事を長く経験してきている」の順に、
キャリアコンサルティングを受けた経験がない者よりも割合が高くなっている。

そしてここからわかることとして、

『キャリアコンサルティング経験がある者の方が、特定の分野の仕事に限定した職業経験を積むよりも、
異分野へのキャリアチェンジを積極的に行う傾向があることがみてとれる。』

『キャリアコンサルティングにより、自らの適性や能力がいかせる可能性を幅広く検討した結果、
異分野へのキャリアチェンジをしやすくなっている可能性があると考えられる。

と結論付けています。

「今どき転職は珍しくないし、積極的に異分野を経験できるなんていいな」とか
「転職回数が多いって、それってそもそもどうなのよ」とかさまざまな感想が出そうですね。

それでも
自分の能力が生かせる異分野にキャリアチェンジしやすくなる可能性があるなら、

個人にとってもこの社会にとっても、良い影響のように感じられますね。

⑤『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者の割合が高い。また、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者には、キャリアコンサルティングを企業外で受けている者の割合が比較的高い傾向にある』


これについて労働経済の分析では
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果をもとに次のように分析しています。

『キャリアコンサルティングを受けた者は、自らの職業能力を他社でいかすことができる可能性について
気づきを得やすく、
それにより転職やキャリアチェンジの実現をしやすくなっている可能性が考えられる。
また、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者には、
企業外でキャリアコンサルティングを受けている者が多い。
自社以外の第三者の視点からキャリアコンサルティングを受けることで、
企業外も含め、自らのキャリア形成の可能性についてより客観的に考えることができる可能性があるといえる。』

④についてみる中で、
キャリアコンサルティングの経験がある人には
転職やキャリアチェンジをしやすい傾向があることが分かっていますが、

⑤で自身の職業能力が他の会社で通用すると考える人の割合が高い

とまで聞いてしまうと
立場によっては戸惑ってしまうかたもいらっしゃるでしょう。

これを聞いたうえで、例えば、あなたが人事部にお勤めの場合、

従業員がキャリアコンサルティングを受けると言ったらどうでしょう。
ちょっと戸惑いませんか?

「うわ、キャリアコンサルティングを受けると、転職しちゃうかもしれないのか……。困ったな

このように困惑するかたが一定数いらっしゃるのも当然かもしれません。

そして考えてみてください。
キャリアコンサルティングは決して転職することがもっぱらの目的ではありません。
そのかたが自らの能力を発揮して、いきいきと生きていくにはどうするかを考える場です。



キャリアコンサルティングを受けて最終的に
「転職する」とか「今後のキャリアを見据えて、転職を考える」とそのかた自らが意思決定したということは、
これまでそういったこと(従業員のキャリアの悩みなど)をはなし、
相談し、ともに深く考えるのに適切な相手がいなかっただけなのかもしれません。



少し嫌な言いかたをしますが
そもそもキャリアの悩みを聴く体制のない会社は、

従業員の離職が起こるのは想像に難くありません。


キャリアコンサルティングを会社に導入したら、離職(転職)が増えたというなら、
それまで従業員のキャリアの悩みを聴くことができていなかった、

ということなのかもしれません。


さて、話を戻しましょう。

自身の職業能力が他の会社で通用すると考える人には
ご自身のいる会社の外でキャリアコンサルティングを受けている割合が高い、

ということですが
これはもう納得というところでしょうか。

反対に、

ご自身が今いる会社でキャリアコンサルティング受けるとき(企業内のキャリアコンサルティング)を考えてみましょう。

相談の相手(企業内のキャリアコンサルタントなど)は
「今の会社内に範囲を限定してキャリアを考えましょうね」などと決して言わないと思いますが、

それでも相談者側としては、
相談の相手(企業内のキャリアコンサルタントなど)を目の前にしたとき
「第三者」というよりは、「うちの会社の人」という感覚になってしまい
視野を広げて考えることがしにくいのかもしれません


また、「うちの会社の人だから、転職のことまでは話せないな」と
遠慮したり気が引けたりするのかもしれません。


本音で話しても大丈夫だと思える関係を築くことが大事になってくるわけですが
キャリアコンサルタントと呼ばれる人たちは、
相談のお相手と信頼関係を構築することに常に気を配っています。
心を開いてお話しできるといいですね。





さて、今回はキャリアコンサルティングが労働者のキャリア形成意識やキャリア形成に及ぼす影響について
①~⑤について見て参りました。

次回は⑥以降についてお話しいたします。
どうぞお楽しみになさってくださいね。



あなたとみち応援室は、あなたのキャリア形成、キャリア構築を支援します。
これまでのこと、これからのことをご一緒に考えていきましょう。

この記事があなたのお役にたてましたなら幸いです。

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かとうじゅんこ
カウンセラー
ブログを書いているのはこの人

あなたとみち応援室代表

あなたが【自分に気づき 自分になり 自分であり続けることを支援】するためにカウンセリング、コーチング、キャリア支援サービスを提供しております。

【保有する資格】
・産業カウンセラー
(一般社団法人日本産業カウンセラー協会)
・チャイルドカウンセラー
(一般財団法人日本能力開発推進協会認定)
・家族療法カウンセラー
(一般財団法人日本能力開発推進協会認定)

・NLPプロフェッショナルコーチ
(米国NLP&コーチング研究所認定、日本NLP協会認定)

資格取得後においてもさらなる能力向上に日々励んでおります。
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