
「あなたにキャリア形成の支援は関係あるでしょうか」
前々回のブログはこの問いかけからスタートしました。
これについて「令和4年版労働経済の分析」(厚生労働省)から引用して
キャリアコンサルティングがどのような影響をもたらすかをお伝えし、
前回のブログからは
「キャリアコンサルティングが労働者のキャリア形成意識やキャリア形成に及ぼす影響」として
具体的にどのようなことが労働経済の分析に書かれているかについて
お話しております。
前回のブログはこちら
前々回のブログはこちら
ここまで読み進めてくださったかたは
きっと、ご自身のキャリア形成に興味をお持ちのかただと思います。
そんなあなたが
今後キャリア形成の支援を受けるかどうか
その意思決定を
自ら納得のいく形でできる一助となれば幸いだと思い
ブログ「キャリア形成の支援って、自分に関係ある?意味あるの?」シリーズをお届けしています。
我が国ではまだ、キャリア形成支援サービスを利用しているかたはそう多くありません。
(令和5年度能力開発基本調査によれば、
令和4年度中にキャリアコンサルティングを受けた者は正社員では13.8%……。
決して多くはありませんよね。)
そして今後は、このキャリア形成の支援を受けるかたが増えていくと思います。
社会環境は大きく変化し、
人生100年時代と言われるようになりました。
高齢者でも働くかたが増えています。
出産を経て、就業を継続する女性の割合も年々増加しています。


また雇用環境も変化しました。
バブル崩壊を経て、人事制度や賃金制度改革も進み、
年功による賃金だけでなく、成果主義を取り入れた企業も増えました。
戦後の日本経済の発展の源泉ともいわれた終身雇用制度ですが
現代日本ではあまり機能しておらず
もはや今の若い世代でこれに期待する人はほとんどいらっしゃらないでしょう。
こういった変化のなかでは
当然、人々の職業観も変わらざるを得ません。
移り変わりの激しいこの世の中で
自分に何ができるのか
自分は何がしたいのか
何をどう変えていったらいいのか
意識して、そして中長期的な視点に立って考えていくことが求められます。
移り変わりの激しいこの世の中にありながら、
無意識に過去の職業観のままでいること、
自分のキャリアを他者(会社組織やいわゆる常識)に委ねてしまうことは、
果たして
あなたという
この世にたったひとりのかけがえのない存在の幸せにつながるでしょうか?

「多くを望んではいけない」といったような
古くからの考えかたを大切にされるかたの中には、
「キャリアについて考える」と言うと
「キャリア?与えられた仕事を粛々とこなすことが大事なんだから、
あんまり余計なことを考えるものじゃないよね」とか
「キャリア?贅沢できなくとも普通に暮らせるならそれが一番」という
謙虚な心掛けが頭をよぎることもあるでしょう。
(多様化や格差が広がる現代において、
いまや「普通」というものさえ存在しないのかもしれませんが……。)
謙虚であること、多くを望まず、足るを知ることは素晴らしい姿勢です。
古くから伝えられる考えかたの中には
今もなお通じる普遍的価値があるものが多いとわたしも思います。
そして、
その素晴らしく価値ある姿勢を今後も生かし続けるために、
この移り変わりの激しい世を幸せに生き続ける必要があります。
「キャリアについて考えることが必要だということは分かった。
でも何ができるのか、何がしたいのかも分からないから、無理……」
「中長期視点に立てって言われてもできないよ……」と
困難さを感じ、できそうもない、と途方に暮れてしまうかたもいらっしゃると思います。
そして、それを可能にするのがキャリア形成の支援なのです。

ここまで読んでくださったあなたには、
自身の能力を大きく生かし
それをもって社会に貢献することで
幸せを感じながらいきいきと活躍していただきたいと願っています。
そしてそのことが巡り巡って
あなたのまわりの人々にも良い影響が及ぶことを願っています。
すっかり前置きが長くなりました。
前回に引き続き、
「令和4年版労働経済の分析」(厚生労働省)の続きからご一緒に見て参りましょう。
⑥『キャリアコンサルティングの経験がある者は自発的な能力向上の取組を行うことが必要と考える者の割合が高い。相談場所・機関別にみると、企業内よりも企業外や学校等でキャリアコンサルティングを受けた場合の方が自発的な能力向上の意識が高い者が多い傾向がみられる』
これについて労働経済の分析では
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果をもとに次のように分析しています。
『キャリアコンサルティングを受けることで、
自らの職業能力が他社で通用する可能性についての気づきに加え、
自己啓発の必要性についても意識が高まる可能性があることが分かる。
特に、企業外でキャリアコンサルティングを受けた場合、企業内の場合よりも
自己啓発の必要性についての意識が高まる傾向がみられる。
これは、第三者によるキャリアコンサルティングを受けることにより、
自らのスキルの過不足についてもより客観的に評価することができ、
結果として自己啓発の意識が高まることにつながっている可能性を示唆している。』
キャリアコンサルティングの経験がある者のほうが、
自らの職業能力が他社で通用すると考えている者の割合が高いという内容は前回お伝えしたとおりですが、
自己啓発の必要性についても意識が高まるそうで、
それは特に
企業外でキャリアコンサルティングを受けた場合に高まるということなのですね。
第三者によるキャリアコンサルティングを受けることで
自分にはどういった能力があって
どういった能力が不足しているのかを
客観的に評価することができるようになるというわけです。
⑦『キャリアコンサルティングにより、現在の仕事に対する影響に加え、「自分の目指すべきキャリアが明確になった」「自己啓発を行うきっかけになった」といった、キャリアに関する意識や行動への良い影響を感じている』
これについては厚生労働省の調査の結果をもとに分析がなされています。
それによれば
目指すべきキャリアが明確になった、自己啓発を行うきっかけになったという
意識面や行動面への影響があるとのことです。
本ブログの前置きでも書いたように
世の移り変わりはとても激しいです。
正解など用意されていないこの世界で
目指すべきキャリアが明確になるというのは
とても心強いことではないでしょうか。
想像してみてください。
目指すべきキャリアが明確になり、
それを見据えて
実際に行動するご自分の姿を。
それはいつでしょうか。
そこはどこでしょうか。
だれが一緒でしょうか。
あなたはどんなことを感じているでしょうか……。

つい、熱くなってしまいました。
話を戻しますね。
ほかにも
「仕事に対する意識が高まった」
「上司・部下との意思疎通が円滑になった」といった
現在の仕事に対する良い影響もあると記されています。
意思疎通が円滑になるということについて
なにもキャリアコンサルタント等が直接
ご本人と上司や部下との間を取り持つなどしたわけではないと思います。
では、なぜこのような影響が出るのでしょうか。
これは、キャリアコンサルティングを受けることで、
ご本人が自分自身を客観的に振り返ることができ、
どのようにしたら円滑な意思疎通ができるのかについて解決策を自ら考え出し、
そして実行することができたのだと私は考えます。
これはカウンセリングやコーチングを実施するなかでいつも感じることなのですが、
お困りのことについて、
ご本人はすでに解決策をいくつか持っています。
ただ、それを思い出せなかったり、
検討の範疇から外してしまっていたりするだけなのです。
あなたが本来持つ力に気づいていただき、
その力を十分に発揮して
自ら行動を起こせるようサポートしていくことが
私の仕事(カウンセリング、コーチング、キャリア形成の支援)です。
話を戻しましょう。
続いて⑧です。
⑧『企業内でキャリアコンサルティングを受ける場合は、キャリアの見通しの向上のほか、職業能力の向上、労働条件や人間関係の改善といった変化を感じている者が多い。企業外や公的機関でキャリアコンサルティングを受ける場合は、キャリアの見通しの向上のほか、就職や転職に結びつく者の割合が高い』
これについては
独立行政法人労働政策研究・研修機構の調査結果をもとに次のように分析しています。
『「企業内(人事部)」や「企業内(人事部以外)」でキャリアコンサルティングを受ける場合は、
「将来のことがはっきりした」と答える者の割合が高く、
「職業能力がアップした」「労働条件がよくなった」
「人間関係がよくなった」と感じている者の割合も高くなっている。
一方、「企業外」や「公的機関」でキャリアコンサルティングを受けている者については、
「将来のことがはっきりした」と答える者の割合が高いことに加え、
「就職できた」「仕事を変わった・転職した」と答える者の割合も高い。』
としており、この結果から⑧のような分析結果となっています。
さらに、
『就職活動や転職活動を行うことをきっかけとして
キャリアコンサルティングを受けている場合が多いことも当然あるが、
キャリアコンサルティングの経験により、自らの職業能力が他社で通用する可能性への気づきや、
自己啓発への意識の高まりを通じて、就職や転職の実現に結びついている可能性もあると考えられる。』
とも分析しています。
⑨『キャリアに関する相談先は、相談先が企業外部の場合、正社員については「自分の目指すキャリアが明確になった」「自己啓発を行うきっかけになった」とする割合が、正社員以外については「自己啓発を行うきっかけになった」とする割合が高い』
これについては厚生労働省の調査の結果をもとに分析がなされています。
相談者が正社員であるか、正社員以外であるかという雇用形態の別により
キャリアコンサルティングの効果にどのような違いがみられたかという切り口で分析しています。
これによれば
正社員であっても
自分が目指すキャリアが明確になった、という効果を感じているわけです。
この結果はもしかしたら学生さん等から見て
意外だなあ……と感じるのではないでしょうか。
「えっ??転職しよう思っているならいざ知らず、
正社員って、もう目指すキャリアがはっきりしていて、
迷いなくお仕事をバリバリし、もう安泰!なのではないの?」
とお感じになりませんか。
これは想像ですが「明確になった」という感想の中には
「(これまで明確だと思っていたけど、それよりももっと)明確になった」というものと
「(漠然としていたものが)明確になった」の両方が含まれていると思います。
漠然としていたものが明確になったのだとしたら、
つまりそれ以前は不明確だった、ということかもしれません。
不明確さの中で、その不明確さに耐え持ちこたえる力を持っている、とも言えます。
そして、
持ちこたえることにエネルギーを注ぐよりも
明確さの中で、目指すものへエネルギーを注ぐほうが楽しそうではありませんか。
いずれにしても、
正社員であっても
自分の目指すキャリアを明確に把握することに役立つという効果があるのです。
なお、相談先が企業内部である場合について当該厚生労働省の調査結果では
正社員、正社員以外ともに「仕事に対する意識が高まった」とする割合がもっとも高くなっています。
まとめ
最後にもう一度、
キャリアコンサルティングが労働者に与える影響についてお示しします。
キャリア形成意識やキャリア形成に及ぼす影響
①『キャリアコンサルティングを受けた者の方が、自ら職業生活設計を考えていきたいと考える者の割合が高い傾向がある』
②『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、現在の仕事内容や職業生活全般の満足感が高い傾向にある』
③『過去にキャリアコンサルティング経験のある者の方が転職回数は多い傾向にある』
④『キャリアコンサルティング経験がある者の方が、特定の分野の仕事に限定した職業経験を積むよりも、異分野へのキャリアチェンジを積極的に行う傾向がある』
⑤『キャリアコンサルティングの経験がある者の方が、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者の割合が高い。また、自らの職業能力が他社で通用すると考えている者には、キャリアコンサルティングを企業外で受けている者の割合が比較的高い傾向にある』
⑥『キャリアコンサルティングの経験がある者は自発的な能力向上の取組を行うことが必要と考える者の割合が高い。相談場所・機関別にみると、企業内よりも企業外や学校等でキャリアコ ンサルティングを受けた場合の方が自発的な能力向上の意識が高い者が多い傾向がみられる』
⑦『キャリアコンサルティングにより、現在の仕事に対する影響に加え、「自分の目指すべき キャリアが明確になった」「自己啓発を行うきっかけになった」といった、キャリアに関する意識や行動への良い影響を感じている』
⑧『企業内でキャリアコンサルティングを受ける場合は、キャリアの見通しの向上のほか、職業能力の向上、労働条件や人間関係の改善といった変化を感じている者が多い。企業外や公的機関でキャリアコンサルティングを受ける場合は、キャリアの見通しの向上のほか、就職や転職に結びつく者の割合が高い』
⑨『キャリアに関する相談先は、相談先が企業外部の場合、正社員については「自分の目指すキャリアが明確になった」「自己啓発を行うきっかけになった」とする割合が、正社員以外 については「自己啓発を行うきっかけになった」とする割合が高い』
(令和4年版労働経済の分析(厚生労働省)p221~p228から引用。ただし丸数字は本ブログ作者が便宜的に附番しました。)
いかがでしたか?
意外だとお感じになる結果もあったでしょうし、
そうだよね、当然だよねという結果もあったでしょう。
キャリア形成の支援をうけるかどうか迷ったら、
本ブログをぜひ参考になさってくださいね。
あなたとみち応援室は、あなたのキャリア形成、キャリア構築を支援します。
これまでのこと、これからのことをご一緒に考えていきましょう。
この記事があなたのお役にたてましたなら幸いです。